庄野潤三 『貝がらと海の音』

庄野潤三『貝がらと海の音』(新潮文庫)を読んでいる。
これは、結構、すごいかもしれない。
夕べの雲』と同様、庄野家の日常が淡々と記されている。時代は、『夕べの雲』から30年くらい下っている。3人の子がそれぞれ結婚し、孫が生まれ、ひ孫が生まれ、そういった一族を含めた日常である。
ジャンル的には、私小説、ということになるのだろう。でも、読み進めていくにつれて、これは、小説というより、庄野潤三を王にいただく庄野王国の歴史書みたいだなあ(子供とか友人との付き合いが、国家間の外交・交易を思わせる)、とか、私は全くやらないのだけれど、RPGみたいだなあ(エピソードの出方とかが)、とか、それこそ庄野潤三のブログみたいだなあ、とか、そういうイメージがわいてきた。
90年代以降の庄野潤三の一連の作品をブログみたいにして(つまりは、はてなのキーワードみたいに登場人物のページを作って、本文にリンクをはるなどして)電子ブックを作ったら、すごいはまりそう。
そういうイメージが的はずれでなければ、すごく現代的な小説なのかもしれないし、はまる人がどんどん出てきても不思議ではない。解説の江國香織のいう、「庄野文学には強烈な中毒性がある」という指摘は、あたっていると思う。