庄野潤三 ワシントンのうた 文學界1月号

文學界1月号購入。庄野潤三の新連載「ワシントンのうた」を読む。
庄野さんは、毎年毎年、文芸雑誌の新年号に新連載開始、12月号に最終回、そういうペースでずっと執筆を続けている。
題材は、もっぱら自分の身の回りのこと。自宅の庭に何が咲いたとか、家の周りを散歩していたらだれそれさんとすれ違ってあいさつしたとか、そういうことが書かれている。
まあ、言ってみれば、我々がやっているブログと大差ないということもできる。
ところが、「貝がらと海の音」でも「せきれい」でもよいが、このシリーズを通して読んでみると、一つ一つの小さな出来事が響きあって、大きな交響曲のような一つの世界を作っていることに気付いて驚かされる。
そこが我々素人との大きな違いであり、つまりは筆力の差ということなのだ。
さて、そんなわけで、また新連載が始まった。
また、いつもの世界が始まるのかと思ったら、「ここで私は、これまであまり取り上げたことのない私の幼年時代のことを中心に書いてみたい」というので驚いた。
今回は、そういう作品になるらしい。
実際、子供のときのトンボとりの話などが書かれている。
これは、大きな方向転換である。びっくりした。
ただし、文体はいつもの庄野文体であるので、ゆったりとした気持ちで読み進めることができ、楽しい。
これからどういう展開になるのか、毎月楽しみだ。