小山清 日々の麺麭・風貌

日日の麺麭・風貌 (講談社文芸文庫)

日日の麺麭・風貌 (講談社文芸文庫)

庄野潤三の新連載「ワシントンのうた」を目当てに、「文學界」1月号を購入した話は前に書いた。
他のページを見ていたら、狐(ペンネームです)の「文庫本を求めて」という書評の連載があるのに気が付いた。
水曜日は狐の書評 ―日刊ゲンダイ匿名コラム (ちくま文庫)
ここでは、長年続いた「日刊ゲンダイ」での書評の連載が、2003年8月で終了したとある。発表場所を移して健在だったというわけだ。
さて、本欄で発刊を知ったのが冒頭の文庫である。
小山清は、小沼丹庄野潤三の文章に触れられていたので、気になっていた。
筑摩書房から全1冊の全集が出ているが、高いのと、電車に持ち込んで読む本では到底ないのとで、買わないままになっていた。
読みたい作家の本が文庫で出るのはうれしい。早速購入した。
小山清明治44年浅草区千束町、通称新吉原で生まれる。
関東大震災以前の、おそらくは江戸の名残を色濃く留めていたであろう吉原の街並みでの日常生活を丹念に綴った「桜林」がいい。
後年、脳梗塞による失語症に陥った「不遇」の作家、とされている(「不遇」は、わざわざ帯にも記されている)が、あんまりそういうことは気にしないで読んだほうがいいみたいだ。
ずっと昔に挑戦して挫折した樋口一葉たけくらべ」に再挑戦したくなった。