庄野潤三『ガンビア滞在記』

庄野潤三ガンビア滞在記』(中公文庫)読了。
国立みちくさ書店で購入したもの。最近の庄野さんの世界につながる作品の中では、最も古いものではないだろうか。『静物』より以前の作品だ。気になっていたものだけに、見つけたときは嬉しかった。『水の都』といい、『ガンビア滞在記』といい、幸運な出会いが続いていて嬉しい。
内容は期待に違わず最近の路線を彷彿とさせるもの。あとがきに曰く、「私は滞在記という名前をつけたが、考えてみると私たちはみなこの世の中に滞在しているわけである。自分の書くものも願わくばいつも滞在記のようなものでありたい。」
さらっと書いているが、「私たちは皆この世の中に滞在している」というところは、庄野さんの人生の見方を端的に示した言葉のように読みとれる。最近のシリーズを、庄野さんは「晩年」の作品と自ら位置づけている。「晩年」という言葉と、「滞在」という言葉は、よく照応しているように感じられる。
それにしても、この作品が長らく絶版というのは惜しい。みすず書房の『大人の本棚』あたりで取り上げるのはどうだろうか。小沼丹訳の『旅は驢馬を連れて』を復刊してくれたことでもあるし、どうだろうか。