内田百輭『有頂天』 

内田百輭『有頂天』(旺文社文庫)読了。
特筆すべきは、『蜻蛉眠る』だろう。
江國滋による解説にも、「26歳で早世した長男・久吉への慟哭の記であると同時に、先妻とのすさまじい葛藤の告白でもある」「これほど烈しい調子の文章は百輭文学の中でも稀である」とある。
ところで、ここでの「蜻蛉」は、「とんぼ」なのか、「かげろう」なのか。
巻末の、平山三郎氏による『「有頂天」雑記』に、
久吉に
蜻蛉の眠りて暮れし垣根かな
という、百輭俳句の引用がある。
言葉の調子から推測すると「かげろう」ということになりそうだが、どうなのだろうか。