庄野潤三『ピアノの音』

庄野潤三『ピアノの音』(講談社文芸文庫)読了。
庄野氏がハーモニカを吹く。奥さんがそれに合わせて歌を歌う。
日常生活を淡々と記す中に、ハーモニカの記載も挿入される。
季節によって、徐々に歌う歌が変化していく。
他の記載も、一つ一つは、何気ない出来事でも、季節や年月によって、少しずつ変化していく事柄が多い。
フーちゃんの習字も、ひらがなばかりだったのが、漢字を書くようになった。
全ての出来事が、それぞれ異なったペースで、少しずつ変化していく、その有様を、出来事ごとに整理して書くのではなくて、時系列に沿って並列的に書いていく。
大勢の演奏家が、それぞれ異なったメロディーを同時に演奏して、それぞれのメロディーも美しく聞こえるし、全体としてもハーモニーになっている、そういう小説。