種村季弘氏死去

今日の朝刊に、種村季弘氏の死亡記事が掲載されていた。亡くなられたのは、8月29日とのことである。
ちょうど、旺文社文庫版の内田百輭『鶴』を読んでいて、種村さんが解説を書いているのだが、これが素晴らしい。
「何しろ他の人にはごくありきたりの日常生活がごくあたりまえに進行しているようにしか見えないというのに、この種の人物には、同じ何でもない日常がいたるところに予測不能の危険が待ち伏せている合戦場か、この世の果ての険呑な野生地と見え、たえず危機に対する精密な対策をおさおさ怠ってはならぬように思われるからである」
というくだりなど、内田百輭の特質を見事に捉えていると思う。そう思ったところが他にいくつもある。