庄野潤三『夕べの雲』

庄野潤三夕べの雲』(講談社文芸文庫)読了。
7月25日付朝日新聞書評欄の『自作再訪』に、『夕べの雲』が載っていた。
それまでにも、小沼丹の友人ということで、新潮日本文学全集の端本を買い、『プールサイド小景』を読んでいた。
そのときは、少し、文章の感じが堅いかな?という印象で、そのままになっていたが、『自作再訪』を読んで、ガゼン興味を引き立てられた。
40年くらい前の新興住宅地、というより、あと少しで新興住宅地になりそうな近郊の山林の一角に住居を構えた夫婦と高校生〜小学生の子供3人の生活記。『自作再訪』では、自然に親しむ生活のディテールが紹介されており、それが私の興味を引いたのだが、実際読んでみると、それだけにとどまらず、今、目の前にあっても、いつかはなくなってしまう物事に対する思いとかが、さりげないけれども深い思考に基づいて記されており、読みやすいけれども読み応えのある小説になっていた。
読売文学賞受賞作。小沼丹も同賞の受賞作家だが、読売文学賞って、なかなかに渋いところをついてくるのだねえ。